「プロとして 仕事白書」は、さまざまな職業で「プロ」としての道を歩む人たちの仕事の現場と、思いを伝えるシリーズとして、水曜の新潟日報朝刊に掲載しています。このホームページには、紙面掲載記事に加え、記者の取材後記「プラス・アルファ」や、テーマ別会議室「コーヒーブレーク」もあります。意見交換、交流の場として、記事の感想やご意見をどんどんお寄せください。

それぞれの人生がしのばれる式を

葬祭ディレクター 関武浩さん(44)=新潟市西区

【写真】祭壇を飾りつける関武浩さん。「故人を送る最後の機会。参列した人の記憶に残るようにしたい」と細かな配置にも気を配る=新潟市中央区本町通10の公益社本町式場(写真画像部・佐藤稔治撮影)
 〈人それぞれに、さまざまな人生がある。それが思いしのばれるような葬儀にしたい。常にそれを考えて仕事に携わっている〉


 「穏やかな春の日に、一陣の悲しい風が吹きました」。新潟市中央区の葬儀社「公益社」の本町式場(同区)。通夜の席に、静かで優しい声が響く。葬儀の司会は、関さんの数ある仕事の一つだ。

 遺族からの連絡を受けて病院に向かうことから始まり、葬儀の内容確認や飾りつけ作業、式での司会など、一連の仕事を基本的にすべて一人で担当する。

 通夜から葬儀、出棺を見届けるまでの約1日半、ほとんど休む暇がないときもある。「終わった」と思った後から立て続けに仕事が入ると、心底疲れる。でも、そんな時に思い浮かぶのは、今まで担当した数々の葬儀だ。

 小さな子どもを残して亡くなったお母さん。長年連れ添った伴侶を亡くした、おじいさんの寂しげな顔。「その故人の葬儀は一度限り。疲れたからといって、心のこもらない対応はできない」と力を込める。


 〈大事な人を亡くして、遺族の方は気が動転していることが多い。安心して話ができるように、家族のように接したい〉

 病院などで遺族と対面すると、まず「交渉」が始まる。故人の遺志、社会的な地位、遺族の希望を確認して、その思いにかなう葬儀の形式、内容を提案する。

 心掛けているのは、葬儀内容や葬儀に掛ける金額をしっかりと確認すること。確認が不十分だと、遺族とトラブルになることもある。

 基本的には遺族に全部任せるが、確認しておかないと後で自分が痛い目を見ることもある。その辺りのさじ加減が難しいという。

 入社は7年前。それまでの仕事を辞め、職を探している時に求人広告が目に飛び込んだ。千葉の大学に通っていた時に、葬儀屋でアルバイトをした経験もあったが、それ以上に「人がしない仕事をしたい」という気持ちが決め手になった。

 〈教えてもらうというより、見て盗めという雰囲気。まずは自分で考えてやるしかなかった〉

 先輩に仕事を教えてもらった覚えはあまりない。先輩が仕切る葬儀会場の隅っこに腰を下ろし、一挙手一投足に目を凝らし、祭壇の飾りつけを手伝いながら、一つ一つ体で覚えた。「うちの会社、けっこう体育会系なんですよね」と、入社間もないころの自分を振り返る。

 この仕事を始めてから、見ず知らずの家族の人間関係がすぐに分かるようになった。誰に話をすれば葬儀の内容や日程を決めてくれるのか、数多くの遺族と出会うことで自然と感じ取れるようになった。


 市内に数ある式場、さらに同じ会社の20人ほどの社員の中で、自分が担当することになる葬儀。「仏縁というんですかね。仏様に導かれたような、不思議な巡り合わせを感じているんです」。仕事を取りに得意先を回る営業と違って、連絡が来るのを待つ受け身の職業であるだけに、なおさらそう感じる。

 〈参列した人が「いいお葬式だったね」と言ってくれるのが一番うれしい。故人に合った葬儀ができたのかなと、ようやく肩の荷が下りるような気がする〉

 参列者が、故人とのさまざまな思い出話に花を咲かせる。葬儀が終わり、笑顔で家路につく。それが関さんの理想だ。だから、遺族や親せきへのケアは忘れない。「『元気出して』と言ったって、元気にならないでしょう。相手の気持ちに寄り添って話しかけています」

 帰りがけ、参列した人に「おれのときも頼むよ」と声を掛けられる時もある。「認められたのかなと思うけれど、『まだそんなこと考えないでください』とすぐ切り返しますよ」と関さんは笑顔を見せる。

 〈故人と遺族のために、滞りなく葬儀を営む。参列者に故人をしのんでもらう。当たり前だけど、自分の仕事はそれに尽きると思う〉

 妻と一緒に買い物や野球観戦をして過ごす休日は、貴重なリフレッシュの時間だ。「オンとオフを切り替えるためには欠かせないですね」と表情を緩めた。

(報道部・上林陸来)

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